あらすじ
『立喰師列伝』は、第二次世界大戦終結直後の東京を舞台に、伝説の立ち喰師たちの姿を描く異色のドラマ作品である。戦後の復興期、闇市の片隅に粗末な蕎麦屋があった。閉店間際、そこに現れたのは、月見の銀二と名乗る男。彼は巧みな話術と執拗な交渉で、店主から月見蕎麦をせしめる。これが伝説の立ち喰師の始まりであった。 時代は移り変わり、1960年代の安保闘争の最中には、忽然と姿を消した美しき女立ち喰師、キツネコロッケのお銀の噂が街を駆け巡る。高度経済成長期には、路地裏を彷徨う負け犬の泣き虫イヌマルが登場。そして、スキャンダラスな死によって立ち喰師の存在を世に知らしめた冷やし狸正、大手牛丼チェーンに終止符を打った牛丼の牛五郎、ファストフード業界全体を震撼させたハンバーガー哲など、個性豊かな立ち喰師たちが次々と現れる。 彼らは、食文化の変化とともに現れては消える幻影のような存在であり、社会の暗部で食にまつわる異議を唱え続けた反骨の英雄たちである。本作は、そんな彼らの伝説を、独特の語り口で現代に蘇らせる。