廃墟をさまよう少女と、ラジオから聞こえる詩人の声

公開されたトレーラーは、荒廃した終末後の世界を犬と共に歩く少女の姿を映し出す。そこに流れるのは、ラジオから毎日決まった時間に語りかけてくる詩人の声。しかしある日、その「決まった時間」が変化する——。静謐でどこか詩的な映像が、わずかな尺の中に独特の世界観を凝縮している。

声の出演は、少女役をMyu、詩人役を小原澄人(Sumto Owara)が担当。全編の脚本・絵コンテ・アニメーション・背景美術・コンポジット・音響・音楽をすべて制作者のシュズクが一人でこなしており、その制作規模の小ささとクオリティのギャップに驚かされる。協力クレジットにはOlduvaiの松尾俊、Digitalpaint.jpの平岩信介、そしてSTUDIO COLORIDOのアニメーター兼京都精華大学の教員である正木恵が名を連ねる。

国内外の映画祭で受賞歴を持つ卒業制作

「鯨を夢む」はシュズクの卒業制作でありながら、すでに国際的な評価を獲得している。カナダのファンタジア国際映画祭2025の「Anime no bento 2025」部門、フィラデルフィア・アジア系アメリカ人映画祭への選出に加え、高知アニメクリエイター賞2025、石川アニメアワード2025でも受賞を果たしている。

卒業制作がここまで多くの映画祭を渡り歩くのは、決して珍しいことではないが、独立系・個人制作という枠組みの中でこれだけの実績を積み上げた作品が、5月1日にYouTubeで誰でも無料で視聴できるというのは特筆すべき点だ。商業アニメとは異なる、個人の視点から生まれた表現がどのような体験をもたらすのか、配信開始後の反響が楽しみなところだ。

5月1日のYouTube公開に向けて、今後さらなる情報が出てくる可能性もある。まずはトレーラーでその世界観を確かめてみてほしい。