約9年の連載に幕——最終10巻、本日発売
大窪晶与「ヴラド・ドラクラ」の最終10巻が、本日7月15日に発売された。本作はKADOKAWAの漫画誌「ハルタ」にて2017年5月から2026年6月まで連載されており、実に約9年の歳月をかけて完結に至った。単行本全10巻という形で、ヴラド三世の波乱に満ちた生涯がひとつの物語として完成したことになる。
最終巻の発売をもって、読者はこれまで積み重ねてきたヴラドの生き様——そして死に様——を、一冊の本として手に取ることができる。長期連載を追い続けてきたファンにとっては、感慨もひとしおだろう。
吸血鬼伝説の源流を辿る、骨太の歴史ロマン
「ヴラド・ドラクラ」は、吸血鬼ドラキュラのモデルとなったことで知られるヴラド三世の実像を描いた歴史漫画だ。15世紀のワラキア公国を舞台に、オスマン帝国とハンガリー王国という大国の狭間で生き抜いた一人の君主の、壮絶な半生が描かれる。「串刺し公」という異名で恐れられた彼の苛烈な統治の裏にあった信念や葛藤を、大窪晶与は丁寧な筆致で掘り下げてきた。
歴史的な事実を軸にしながらも、人間ヴラドの内面に深く踏み込んだ作風は、本作ならではの魅力だ。ドラキュラという名前から怪奇・ホラー方面を想像する読者もいるかもしれないが、本作はあくまで骨格のしっかりした歴史ロマンであり、政治的な駆け引きや人間関係の機微が物語の中心を成している。
「ハルタ」が育てた、9年越しの大作
連載媒体である「ハルタ」は、「乙嫁語り」や「ダンジョン飯」など、長期にわたる大作を数多く輩出してきた雑誌として知られる。本作もその系譜に連なる作品であり、約9年という連載期間が示す通り、作者・大窪晶与がヴラド三世という題材と真摯に向き合い続けた作品だということが伝わってくる。
全10巻という規模は、歴史漫画としてはコンパクトにまとまっている印象もあるが、それゆえに無駄のない濃密な物語体験が期待できる。既刊を読んでいなかった読者にとっても、完結した今こそ一気読みに踏み切る好機だ。
最終巻の発売を機に、ヴラド三世という歴史上の人物への関心がさらに広がっていくか、今後の反響が楽しみなところだ。