恋愛マンガの新定番として歩んだ連載の軌跡

「なのに、千輝くんが甘すぎる。」は2017年に連載がスタートし、少女マンガ誌の読者から長きにわたって支持を集めてきた作品だ。タイトルにある「千輝くん」こと千輝という名の男子高校生と、ヒロインとの甘酸っぱい恋愛模様を描いたラブコメディで、「塩対応に見えて実は溺愛系」という王道ながらも丁寧に描かれたキャラクター造形が多くの読者の心をつかんだ。

恋愛に奥手なヒロインと、ミステリアスな完璧男子という組み合わせは少女マンガの定番でありながら、本作はそのテンポ感と心理描写の細やかさで一線を画してきた。読者がキャラクターに感情移入しやすい構成が支持された理由のひとつだろう。

実写映画化も実現——メディアミックスで広がった世界観

連載の人気を受け、2023年には実写映画が公開。原作ファンだけでなく、映像作品から入った新規ファンを取り込むことにも成功し、作品の知名度をさらに押し上げた。実写化という大きな節目を経てなお原作が連載を続けていたことは、作品そのものへの信頼の厚さを示していたとも言える。

その実写映画の余韻が冷めやらぬなかでの完結発表は、ファンにとって感慨深いものがあるはずだ。映画でこの作品を初めて知り、そのまま原作を追いかけてきた読者にとっては、ひとつの青春が終わるような感覚を覚えるかもしれない。

完結を迎えた今、改めて振り返りたい作品

少女マンガとして着実に積み上げてきた読者との信頼関係、そして実写映画という形でのメディアミックス成功——「なのに、千輝くんが甘すぎる。」はその両方を成し遂げた作品として記憶されるだろう。連載完結によって物語は完全なかたちで読者の手に渡ったわけであり、今こそ最初から通して読み直すには絶好のタイミングとも言える。

今後、完結を受けた単行本の最終巻発売や、あるいは新たなメディアミックス展開の可能性など、続報にも引き続き注目していきたい。