嫁姑の「ぎこちない連帯」という新鮮な切り口

本作のタイトルは「仏田龍平監督の母と妻」。映画監督・仏田龍平をめぐる、その母と妻——つまり姑と嫁の関係性を軸に物語が展開していく。

嫁姑ものといえば、対立や確執を描く作品が多いなかで、今作が打ち出しているのは「ぎこちない連帯」というキーワードだ。反目するのでも、すんなり仲良くなるのでもなく、どこかぎこちなさを抱えながらも同じ方向を向いていく二人の女性の姿は、リアルな人間関係の機微を丁寧に描いてきた入江喜和ならではの視点といえる。

入江喜和とは——「おかえりアルバトロス」で知られる実力派

入江喜和は、「ためらいのエチカ」「おかえりアルバトロス」など、女性の生き方や人間関係を繊細なタッチで描いてきたベテラン漫画家だ。特に「おかえりアルバトロス」は、年齢を重ねた女性たちの友情と自立を描いた作品として根強いファンを持つ。

その入江が、今度は嫁と姑という関係性に挑む。タイトルに「監督の」という言葉が入ることで、二人の女性がある意味で同じ男性の「周辺」に置かれた存在であることが示唆されており、そこから何を描き出すのかが気になるところだ。単なるホームドラマにとどまらない、複雑な感情の地層を掘り起こしてくれるはずだと期待が高まる。

なお、同号には坂田靖子の画業50周年を記念した読切も掲載されており、JOUR9月号は新連載と記念作品が重なった充実の一冊となっている。坂田靖子といえば「バジル氏の優雅な生活」をはじめとするユーモアと幻想が融け合う独特の作風で知られており、50周年という節目の読切がどのような内容になるのかも見逃せない。

「仏田龍平監督の母と妻」の今後の展開、そして入江喜和がこの関係性をどこへ連れていくのか、続報に注目していきたい。