「コオリオニ」「悪魔を憐れむ歌」で知られるマンガ家・梶本レイカの新連載「贋作の第十番」が、2025年4月6日発売の月刊ミステリーボニータ5月号(秋田書店)にて連載をスタートした。今号は表紙も飾っており、編集部の力の入れようが伝わってくる。

作品のタイトルにある「第十番」とは、ベートーヴェンの交響曲第10番を指すと思われる。ベートーヴェンは第9番「合唱」を最後の完成交響曲として世を去ったが、第10番のスケッチが実在することは音楽史上でも知られた事実だ。そのベートーヴェンの楽譜が「贋作」と判定されるところからミステリーが動き出す、という設定は、クラシック音楽ファンにとっても興味深い切り口といえる。

梶本レイカはこれまで、ホラー色の強い「コオリオニ」や、人間の業と情念を描いた「悪魔を憐れむ歌」など、独自の世界観で読者を引き込んできた作家だ。緻密な心理描写と、どこか不穏な空気を漂わせるストーリーテリングが持ち味で、ミステリーボニータという誌面との相性は抜群といっていい。

今回の新連載は「ミステリーロマンス」というジャンルに分類されており、謎解きの要素に加えて人間関係の機微も丁寧に描かれることが期待される。楽譜の真贋をめぐる調査が進む中で、登場人物たちの間にどんな感情が生まれるのか——梶本作品らしい、一筋縄ではいかない関係性が展開されそうだ。

クラシック音楽を題材にしたマンガは決して多くはないが、近年は音楽×ミステリーという組み合わせが注目を集めている。ベートーヴェンという誰もが名前を知る作曲家の「幻の楽譜」という素材は、音楽に詳しくない読者にも入りやすい入口になるはずだ。梶本レイカの筆力があれば、専門知識がなくても物語に引き込まれる作品に仕上がっていることだろう。

連載は始まったばかりで、まだ謎の全容は見えていない。贋作と判定された楽譜の裏に何が隠されているのか、そしてその謎を追う人物たちがどんな運命をたどるのか——今後の展開に大きな期待が高まる。