怪獣省の若きエースと、謎めいた捜査官の出会い

本作の舞台は、世界各地に怪獣が出現するようになった世界。怪獣の殲滅を国家的使命とする「怪獣省」に所属する若きエース・岩戸は、怪獣の出現を分析・予測する予報班に勤務している。そんな彼女のもとにある日、警視庁のベテラン捜査官・船村が姿を現す。行方不明者を探しているという船村の言葉に岩戸は不信感を覚えるが、そうこうするうちに甚大な被害をもたらすと予測される怪獣が上陸し、二人は否応なく同じ事態に巻き込まれていく。

怪獣が引き起こす災害と、その陰に潜む人間の悪意を同時に描くというのが本作の骨格だ。巨大生物との戦いを描くパニック的な興奮と、犯罪捜査ものが持つ緊張感と謎解きの面白さを一本の作品に凝縮しようという試みは、なかなか挑戦的な組み合わせといえる。

ミステリの名手・大倉崇裕が怪獣世界に挑む

原作を手がける大倉崇裕は、警察小説や本格ミステリの書き手として知られる小説家。「福家警部補」シリーズや「警視庁いきもの係」シリーズなど、ジャンルの枠を巧みに横断しながらエンターテインメント性の高い作品を生み出してきた人物だ。そのミステリ作家としての経験値が、怪獣という非日常的な題材と組み合わさったとき、どんな化学反応を起こすのかが本作最大の見どころといっていい。

単なる怪獣バトルに終わらず、「誰が、なぜ、何をしたのか」という問いを物語の中心に据えているのは大倉原作ならではの構造だ。怪獣特撮ファンだけでなく、ミステリ読者にも刺さる設計になっている点は、月刊少年シリウスという少年誌連載でありながら幅広い読者層を意識した作りに見える。

「怪獣×ミステリ」という新たな文脈

近年、怪獣ものはアニメ・マンガの世界でも多様な切り口が模索されてきた。純粋な戦闘アクションにとどまらず、怪獣が存在する世界の「社会」や「組織」を掘り下げる作品が増えてきたことは、ジャンルとしての成熟を示している。「殲滅特区」はその流れの中でも、犯罪捜査という視点を正面から持ち込んだ点でひときわ異色だ。

怪獣省という行政組織と警視庁という捜査機関が交差するという設定は、縦割りの官僚組織が生む摩擦や確執を物語に持ち込む余地もある。岩戸と船村というキャラクターの関係性がどう変化していくのか、そして怪獣関連犯罪の全貌がどのように明かされていくのか、第1巻を読み終えた時点ですでに続きが気になる構成になっているはずだ。

月刊少年シリウスでの連載は現在も続いており、今後のストーリー展開とともにコミックスの続巻にも期待が高まる。