庶民の少年が王立学園に乗り込む——そして悪夢が始まる

本作の主人公は、王立召喚師学園に庶民として入学したヘレシー。初日から出自を馬鹿にしてきた貴族と決闘になるという波乱の幕開けだが、問題はそこではない。彼の召喚獣・ハッピーは、耐性のない者が目にした瞬間に正気を失ってしまうという、どう考えても「かわいい」とは言い難い禍々しい存在なのだ。

決闘相手は発狂し、立ち会っていた少女・レティーシアも恐怖のあまりヘレシーに魅入られてしまう。そんな惨状のなか、ヘレシーは逃げ惑う人々に向かって穏やかな笑顔で「なぜ逃げるんだい? 僕の召喚獣は可愛いよ」と語りかける。この一言が、彼の根本的なズレ——あるいは異常性——を端的に表している。

原作小説からコミカライズへ、依澄れいが描く「ズレた無自覚系」の恐怖

原作は夜迎樹による小説で、今回のコミカライズを手がけるのは依澄れい。作画担当の力量が問われるのは、何といってもハッピーのビジュアル表現だ。「見た者が正気を失う」という設定を漫画という媒体でどう落とし込むか——そのさじ加減ひとつで作品の空気感が大きく変わる。第1巻を読む上での最初の見どころはここにある。

「無自覚系主人公」という点も本作の肝だ。悪意がないどころか、ヘレシーは本当に心の底からハッピーを愛している。その純粋さが周囲の恐怖と噛み合わないことで生まれるズレが、ギャグとも恐怖ともとれない独特のトーンを生み出している。ダークファンタジーとコメディの境界線を意図的に曖昧にするこのスタイルは、近年のなろう系・異世界ファンタジーのなかでも一線を画す切り口といえる。

レティーシアが「恐怖のあまりヘレシーに魅入られてしまう」という描写も気になるところで、この関係性が今後どう展開するのかはヒロインポジションの観点からも目が離せない。

第1巻の発売を受け、今後どこまで物語が広がっていくのか——続刊の情報にも注目しておきたい。