"無職S"という絶望的なスタートラインから
本作の舞台となるのは、人々の才能や能力が数値として可視化された世界。そこでは生まれ持った才能の有無が人生を大きく左右する。主人公の少女に与えられたのは、あらゆる職業への適性がゼロを意味する「無職S」というランク。文字通り、社会的な底辺に位置づけられた存在だ。
しかし彼女は、その絶望的なステータスを背負いながらも、トップアイドルになるという夢を諦めない。過去のある出来事が彼女を突き動かす原動力となっており、単なる「夢を追う物語」にとどまらない、感情的な深みを持った作品に仕上がっていることが伺える。
下剋上ものとして際立つ世界設定の妙
近年のマンガ・アニメシーンでは、ステータスや才能の可視化という設定を用いた「下剋上もの」が一大ジャンルを形成している。本作がそのなかで一線を画しているのは、舞台がアイドル業界という点だ。
努力や個性、表現力が問われるエンターテインメントの世界に、才能の数値化という冷酷なシステムを持ち込むことで、独特の緊張感と逆転劇の爽快感が生まれる構造になっている。「才能がない」と烙印を押された主人公が、どのような武器を持ってアイドルの世界を生き抜いていくのか——そこが本作最大の読みどころと言えるだろう。
作者のせつなゆうこは、キャラクターの感情表現と読者を引き込む物語構成に定評のある作家だ。スクウェア・エニックスという発表の場を得た本作が、今後どのような展開を見せるのか、続刊の動向からも目が離せない。