「普通に生きたい天才」が主人公という逆転の発想
本作は、藍依青糸が原作を手がけ、諸星サロが作画を担当する現代和風ファンタジー。2025年6月25日発売の月刊ビッグガンガンVol.07に第1話が掲載され、スクウェア・エニックスの看板誌のひとつでいよいよ連載がスタートした。
タイトルにある「七条家の糸使い」とは、糸を操る術で妖怪を退治する一族・七条家の術者を指す。主人公は、その七条家に属する天才術者でありながら、「普通に生きたい」という至極まっとうな願望を持つ人物。そこへ押しかけてきた弟子とともに、望まぬ形で妖怪退治に巻き込まれていく——というのが物語の骨格だ。
「糸使い」という設定が生む独自の世界観
現代を舞台にした和風ファンタジーというジャンルは、近年マンガ界でも一定の人気を誇る。ただ、本作が一線を画しているのは「糸を操る」という戦闘スタイルにある。糸は視覚的に動きのダイナミズムを表現しやすく、術の駆け引きや妖怪との対決シーンで独特のスタイリッシュさを生み出せる素材だ。鬼滅の刃の水の呼吸や、蟲師の光脈筋のような「目に見える力の流れ」が、読者を引き込む大きな要素になり得る。
また、「天才だが目立ちたくない」という主人公像は、近年のラノベ・マンガで人気を博してきた"最強無欲系"キャラクターの系譜に連なるが、師弟関係という縦の構図を軸に置くことで、単なる無双譚とは一線を引いた人間ドラマが期待できる。弟子がどれほどひたむきに師を慕い、師がどこまで本気を出さずに済もうとするか——そのせめぎ合いがコメディにも感動にも転びうる、懐の深い設定と言えるだろう。
原作の藍依青糸と作画の諸星サロという分業体制も注目点だ。原作付き作品は世界観の密度と作画クオリティを高いレベルで両立しやすく、月刊ペースでじっくり読ませる誌面とも相性がいい。
連載開始直後ということで、今後の展開やキャラクターの掘り下げがどのように進んでいくか、続刊の情報が待ち遠しい。