上林よめいによるマンガ「溺 旦那に秘密で配信者に捧げました」の第1巻が、2026年3月26日に発売された。新婚の幸せが夫の異動によって揺らぎ、妻が人気配信者へと心を傾けていく様子を描いた作品だ。

物語の主人公は、前職で出会った河野透と結婚し、新婚生活を満喫していたあすか。愛する夫との日々に幸せを感じていた彼女だったが、夫の転勤というできごとが、その生活に大きな変化をもたらす。慣れない土地での孤独な日々の中で、あすかはある人気配信者の存在に惹かれていき、やがてその想いは夫に隠れたまま深みにはまっていく——というのが本作の軸となるストーリーだ。

タイトルにある「溺」という一字が、この作品のテーマをそのまま体現している。誰かに「溺れる」という感覚は、恋愛マンガの中でもとりわけ生々しい感情のひとつ。夫への愛情が消えたわけではないのに、別の誰かへの依存が静かに育っていくという構図は、単純な不倫ものとは一線を画す心理描写が期待できる。

現実の配信文化、いわゆるVTuberや生配信者への熱狂的な応援文化を背景に持つ設定も、時代性があって興味深い。「推し活」が日常に溶け込んだ現代において、「推し」への感情がどこまでが健全で、どこからが危うくなるのか——本作はその曖昧なラインを、主人公の視点からリアルに描こうとしているように見える。

作者の上林よめいは、感情の機微を丁寧に描くことで知られており、読者の共感を引き出す筆致が持ち味だ。本作でもキャラクターの内面に踏み込んだ描写が期待されるところで、あすかがどのような心の動きを経て配信者に「捧げる」ほどの感情を抱くようになるのか、その過程こそが読みどころになるだろう。

原作ファンにとっては待望の単行本化であり、本作を初めて知る読者にとっても、現代的なテーマと感情的な深みを兼ね備えた入り口として手に取りやすい一冊と言える。今後の巻でストーリーがどう展開していくか、続報にも注目していきたい。