カンヌで明かされた衝撃の企画
フランス・カンヌで開催中のカンヌ国際映画祭にて、映画製作ファンドのK2 Picturesが会見を実施し、手塚治虫の「人間昆虫記」の映画化を正式に発表した。メガホンを取るのは、独自の映像センスで知られる二宮健監督。作品のジャンルは「ダークミュージカル」と銘打たれており、原作の持つ毒気と退廃的な世界観を、ミュージカルという形式で昇華させる意欲的なアプローチが取られる。
世界最高峰の映画祭の場でお披露目されたことからも、この企画が単なる国内向けのコンテンツにとどまらず、グローバルな展開を見据えた作品として位置づけられていることが伝わってくる。
「人間昆虫記」とはどんな作品か
「人間昆虫記」は、手塚治虫が1970年から1971年にかけて「週刊少年サンデー」に連載した作品で、手塚の長いキャリアの中でも異色中の異色として知られている。主人公は、小説家・劇作家・デザイナーとしての才能を持ちながら、その実態は他者の才能を模倣・搾取することで成り上がってきた女性・十村富子。昆虫の擬態や本能的な生存戦略を人間社会に重ね合わせた、官能的かつ哲学的なサスペンスだ。
手塚作品の中でも大人向けの色が強く、「ブラック・ジャック」や「火の鳥」とは一線を画すダークさが特徴。長らく映像化が難しいとされてきた作品だけに、今回の発表は原作ファンにとっても驚きをもって受け止められているはずだ。
ダークミュージカルという選択の意味
今回の映画化で最も注目すべきは、ジャンルとして「ダークミュージカル」が選ばれた点だろう。歌と踊りという華やかな表現形式と、原作の持つ冷酷で退廃的なテーマ性は、一見すると相反するように思える。しかしそれこそが、この企画の最大の賭けであり、面白さでもある。
監督の二宮健は、「全員死刑」や「ビューティフルドリーマー」など、既成概念を揺さぶる作風で知られる気鋭の映像作家だ。その二宮監督が手塚の「人間昆虫記」という素材を手にしたとき、どんな化学反応が生まれるのか。キャスティングや音楽スタッフなど、続報が出るたびに作品の輪郭が鮮明になっていくはずで、今後の情報解禁が待ち遠しい。