就活に挫折した大学生が、美術館の裏側へ
主人公は、アルビノの大学生・波田棗。就職活動の面接で「教養が足りない」と言われ、半ばヤケになりながら学芸員の資格を取得する。そんな棗のもとに、東洋美術館でのインターンの話が舞い込んでくる——というところから物語は動き出す。美術館という非日常的な空間で、棗がどんな「予想外」と出会うのかが、早くも気になるところだ。
作者のササキエンジュは「新鋭」と紹介されており、今作が本格的な注目を集める機会になりそうだ。掲載誌のモーニングは、「島耕作」シリーズや「クッキングパパ」、近年では「チ。」や「ドラゴン、家を買う。」など、幅広いジャンルのお仕事・社会派マンガを送り出してきた実績がある。「白眉の司」もそうした系譜に連なる作品として、期待が高まる。
「学芸員」というニッチなテーマが持つ可能性
美術館を舞台にした作品は映画やドラマでも稀に見られるが、学芸員の仕事にスポットを当てたマンガはきわめて珍しい。学芸員とは、博物館・美術館において作品の収集・保管・調査・展示を担う専門職だ。表舞台である展示の裏側では、作品の修復や真贋鑑定、貸し出し交渉など、一般の来館者には見えない膨大な業務が日々動いている。
そうした「知られざる裏側」を描くという切り口は、それだけでも十分に新鮮だ。さらに主人公がアルビノという設定も、単なる個性付けにとどまらず、見ること・見られることをテーマとする美術館という空間との深いリンクが感じられる。外見的なマイノリティである棗が、美術品の「見方」を問う世界に飛び込むという構図には、作者の意図的なデザインが透けて見える。
就活の挫折から半ば流れ込むように始まったインターン生活が、棗にとって何を意味するようになるのか。美術や文化財に縁遠かった読者にとっても入りやすい主人公設定でありながら、専門的な知識や業界の内幕もしっかり描かれていくことに期待したい。連載が進むにつれて、この作品独自の「美術館の見え方」が確立されていくことを楽しみに追いかけたい一作だ。