谷崎潤一郎×米代恭という異色の組み合わせ
本作は、大正14年(1925年)に発表された谷崎潤一郎の長編小説『痴人の愛』を原案としたマンガ新連載だ。掲載誌は小学館の『週刊ビッグコミックスピリッツ』で、本日8月3日発売の36・37合併号から連載がスタートした。タイトルに「捏造」という言葉を冠していることからも分かるとおり、原作を忠実になぞるのではなく、米代恭自身の解釈と感性で大胆に再構築する姿勢が最初から打ち出されている。
谷崎の原作は、青年・河合譲治が少女ナオミを自分の理想の女性に育てようとするうちに、逆に彼女に翻弄されていくという倒錯した愛の物語だ。執着、支配、被支配、そして欲望——いまなお色褪せない普遍的なテーマを持つ作品であり、文学史においても「耽美派」を代表する一作として高く評価されている。
米代恭が描く"歪んだ愛"の系譜
米代恭といえば、『あまんちゅ!』のような穏やかな青春作品から、近年は人間の業や感情の暗部に踏み込んだ作品まで幅広い作風を持つ作家として知られる。そんな彼女が谷崎文学という濃密な素材を手にしたとき、どのような化学反応が起きるのかは、ファンならずとも興味を持たずにはいられない。
「捏造」という言葉を自らタイトルに入れた点は、単なる謙遜ではなく、原作への敬意と同時に「これは私の解釈による作品だ」という作家としての宣言と受け取れる。文豪の名作を"リミックス"すると明言するその姿勢は、ともすれば批判を呼びかねない挑戦的な試みだが、だからこそ米代恭という作家が選ばれた必然性を感じさせる。
原作『痴人の愛』が持つ耽美的でアンビバレントな感情の揺れを、現代のマンガ表現でどう翻訳するか。 第1話の掲載をもって、その問いへの答えが少しずつ明かされていくことになる。
連載の行方とともに、今後どのような形で谷崎文学のエッセンスが咀嚼・再構築されていくのか、続報を追っていきたい。