工場勤務の青年と、ダンス教室で出会う女性

本作の主人公は、工場で働く青年・中星一(あたるせいいち)。社会の中での自分の価値を日々模索しながら生きる彼にとって、唯一の楽しみが毎週土曜日に通う社交ダンス教室だ。穏やかな性格の中は年上の参加者たちとも自然に打ち解け、教室での時間を心のよりどころにしている。

そんなある日、教室に年齢の近い女性が現れる。自分をただのOLだと語る浅香にダンスを教えるうち、中は彼女に惹かれていく。しかし、ふたりの関係はすれ違いを重ねながら進んでいく——というのが物語の軸だ。

2001年という時代設定が持つ意味

舞台が2001年に設定されているのは、この作品を読む上で重要なポイントになりそうだ。スマートフォンもSNSも存在しない時代、連絡を取り合うにも待ち合わせをするにも、今よりずっと不確かで、だからこそすれ違いが生まれやすかった。「すれ違う若者のラブストーリー」という作品のテーマは、その時代背景と深く結びついている。

また、社交ダンスという題材も独特の空気感を生み出している。年齢や立場を超えて人が集まる場所であり、身体的な距離の近さと心の距離感のギャップが、ラブストーリーの舞台としてきわめて効果的に機能しそうだ。

作者の本田三五は、これが少年ジャンプ+での新連載となる。工場勤務という地に足のついた主人公の設定や、特定の時代への意識的なこだわりから、作家としての確かな視点が伝わってくる。青春の不器用さや、言葉にできない感情の揺れをどう描いていくのか、今後の展開が楽しみな一作だ。