猛毒の口づけで命を奪う少女・ブルー、その孤独な暗殺稼業

物語の主人公は、生まれつき唇から猛毒を出す特異な体質「双毒竜(アンフィスバエナ)」を持つ少女・ブルー。戦後まもない1948年のシチリア島、マフィアが裏と表の両面から社会を支配するその地で、ブルーは自らの能力をマフィアに利用され、口づけによる暗殺という仕事を強いられていた。

ある日、ボスから「最後の依頼」として命じられたのは、一人の教師・カルマンの暗殺。学校に潜入したブルーは、その任務の中でターゲットとともに自分自身も始末されようとしていることを知ってしまう。逃げ場もなく、頼れる者もいない状況で彼女の前に現れたのが、暗殺対象であるカルマン本人だった。彼もまた「双毒竜」であるという事実が明かされ、二人は共にマフィアと対峙することを選ぶ。

なぜ今、この作品が刺さるのか

「アンフィスバエナのくちづけ」の最大の魅力は、設定のダークさとビジュアルの洗練が絶妙に同居している点にある。マフィアもの、ダークファンタジー、禁断の毒という要素はどれも重く血なまぐさいはずなのに、作品全体から漂う雰囲気はどこかスタイリッシュで美しい。作者・和佳宮テトラの描く線は繊細でありながら力強く、1940年代イタリアという舞台の空気感をしっかりと体に感じさせてくれる。

また、ブルーとカルマンの関係性も読みどころのひとつだ。殺し合う運命にあった二人が、同じ「双毒竜」という共通点をきっかけに手を組む展開は、単純な主従や恋愛には収まらない複雑な引力を持っている。カルマンがブルーに向ける感情が「偏愛」と表現されるあたりにも、この作品ならではの危うさと甘さが滲んでいて、先の展開を読まずにはいられなくなる。

スクウェア・エニックスの月刊Gファンタジーといえば、「黒執事」や「ニセの錬金術師」など、ゴシック・ダーク系の作品を長年送り出してきた雑誌だ。その土壌で育つ本作が、今後どのような物語を紡いでいくのか、連載の行方から目が離せない。