山田尚子、ゴンゴラ監督、吉田健一が語る制作の核心
公開された映像のタイトルは「The Making of Jaadugar: A Witch in Mongolia」。エグゼクティブディレクターの山田尚子が、原作マンガの持つ「時間の流れ」をいかにアニメーションへ落とし込むかという難題について語っている。山田によれば、スタッフはこのアプローチに相当な時間をかけて議論を重ねたという。
映像ではさらに、山田とディレクターのアベル・ゴンゴラ、そしてキャラクターデザイン・作画監督を担当する吉田健一の三者による対話も収録されている。「キャラクターの主輪郭線の外側の線を省略する」という独自の作画技法についても言及されており、Science SARUらしいビジュアル面での実験的な姿勢が伝わってくる。
モンゴルでのロケハンと、声優陣のインタビュー
制作チームはモンゴルでの現地ロケハンも敢行。監督たちは実際にモンゴルの大地を踏み、遊牧民の生活様式を肌で体感した。その経験は、作品の舞台描写に直接反映されているという。13世紀の帝国を描くにあたって、現地の空気感や景観を実際に確かめるという姿勢は、作品へのこだわりの深さを物語っている。
メイキング映像にはキャスト陣のインタビューも収録されており、シタラ役の関根明良、トレゲネ役の小清水亜美、ムハンマド役の斉藤壮馬がそれぞれ作品への思いを語っている。
原作の魅力と、この映像が示す期待感
「天幕のジャードゥーガル」の原作は、Tomato Soupによるマンガ「モンゴルに嫁いだ魔女の話」(英題:A Witch's Life in Mongol)。13世紀のイェケ・モンゴル・ウルス、すなわち世界史上最大の帝国を舞台にした歴史宮廷ドラマだ。
主人公のシタラ(ファティマ)は、医学や科学の知識を武器に生き延びた女性。帝国の拡大によってすべてを失った彼女は、復讐を胸に宮廷へと潜り込む。そこで出会うのが、第二代皇帝オゴデイの第六夫人にして、帝国に対して複雑な感情を抱くトレゲネだ。二人の女性が宮廷政治を動かし、やがては世界そのものを揺るがしていく——そんな骨太な物語が、Science SARUの手でどう映像化されるかは、原作ファンならずとも注目せずにはいられない。
山田尚子×Science SARUという組み合わせは、それだけで期待値を引き上げる。山田は繊細な人物描写と映像詩的な演出で知られ、Science SARUは湯浅政明が設立したスタジオとして、常にアニメーションの表現を更新し続けてきた。今回のメイキング映像で語られた「時間の流れの翻訳」という課題への向き合い方や、作画技法の工夫は、この作品が単なる歴史アニメの枠に収まらないことを予感させる。
放送に向けた続報が、今後どのような形で届けられるか——制作現場の熱量が伝わるこのメイキング映像を見る限り、さらなる情報解禁が待ち遠しい。