3年の沈黙を破る新作、ついに始動

「ノラガミ」で知られる漫画家・あだちとかの新連載「やどやのお犬さま」が、10月6日発売の月刊少年マガジン11月号(講談社)でスタートした。前作の連載終了から3年ぶりとなる待望の新作だ。

舞台は1990年代、山と宿屋と忘れた記憶

物語の主人公は、黒嶺かすみという少女。1990年代を舞台に、豊かな自然の中でのびのびと育ってきた彼女は、祖母の死をきっかけにいとこの家へと移り住むことになる。

転機が訪れるのは中学校の修学旅行中。予想外の事態に巻き込まれたかすみは、山から転落してしまう。目を覚ますと、そこは「忘(ぼう)」と呼ばれる不思議な宿屋だった。この宿屋には、忘れた記憶を取り戻すことができるという。そしてかすみは、自分でも知らなかった自分自身の姿と向き合っていくことになる。

「ノラガミ」作者だからこそ湧き上がる期待

あだちとかといえば、神様と人間が交差する世界観を独特の筆致で描いた「ノラガミ」で、国内外に多くのファンを持つ作家だ。あの作品が持っていた、日常と異界がすれすれで接する空気感——それが今作にも色濃く漂っている。

「忘れた記憶を取り戻せる宿屋」というギミックは、一見ファンタジーでありながら、喪失や自己認識といった普遍的なテーマに直結している。1990年代という時代設定も意図的に感じられ、情報過多な現代とは切り離された、静かで濃密な物語空間を予感させる。かすみという少女がどんな「自分」を知ることになるのか、第1話の段階からすでに引きが強い。

あだちとかが3年という時間をかけて温めてきた物語がどこへ向かうのか、今後の展開から目が離せない。