花本麻実による単行本「芸能界を引退した推しが転校してきた件」が、2026年3月26日に発売された。タイトルだけでオタクの心を鷲掴みにする、夢と現実が交差するラブコメ作品だ。
本作の主人公は、路上ライブ時代から推し続けてきたアイドル・青山春斗が芸能界を引退したことで絶望の日々を送る女の子。ところが、なんとその青山春斗が自分のクラスに転校してくるという、夢にも思わなかった展開が訪れる。さらに「ずっと好きでした」という告白まで飛び出すとあれば、もはや現実離れしたシチュエーションのオンパレードだ。
推しとの距離がゼロになるどころか、まさかの相思相愛という展開は、アイドルオタクなら一度は夢見たことがあるシチュエーションそのもの。作者の花本麻実は、そんな「ありえない奇跡」をロマンチックかつコミカルに描いている。
注目したいのは、ただの「夢のような話」で終わらせていない点だ。路上ライブから応援してきたという設定には、メジャーデビュー前から追いかけてきたファンの熱量と、引退という喪失感がリアルに込められている。推し活をしたことがある人なら、主人公の絶望に自然と感情移入できるはずで、そこからの逆転劇がより鮮やかに映える構造になっている。
芸能界を引退したアイドルが一般人として高校生活を送るという設定も、物語の広がりを感じさせる。スポットライトの外に出た推しが見せる素顔や、ファンと対等な立場になることで生まれる関係性の変化など、単純なラブコメの枠を超えた読み応えが期待できそうだ。
推し文化が広く浸透した今の時代だからこそ、刺さる人には深く刺さる設定と言える。コミックスの続巻や、今後のメディア展開にも期待が高まるところだ。