筋肉への憧れが生んだ、ちょっと特殊なラブコメ

戸沢まりかによる新作マンガ「見られちゃいけない海虎くん」の第1巻が、5月13日についに発売となった。

本作のヒロインは、幼い頃に水難救助隊員に助けられたことがきっかけで筋肉フェチに目覚めてしまった女子高生・山杉汐音。水難救助隊員を夢見るほどその体験を引きずっているあたり、なかなかに業が深い。そんな汐音が出会うのが、水泳部のエース男子・海虎くん。タイトルにある「見られちゃいけない」という一文が、ふたりの関係にどんな秘密が絡んでいるのかを想像させてくれる。

なぜいまこの設定が刺さるのか

「筋肉フェチ」という属性をヒロイン側に持たせるのは、ラブコメとしてかなり攻めた設定だ。通常、スポーツ系ラブコメといえば「頑張る男子を応援するヒロイン」という構図が多いが、本作はヒロイン自身が明確な「好み」を持ち、それが物語を動かすエンジンになっている。汐音の筋肉愛が暴走するシーンと、海虎くんの「見られちゃいけない」事情が絡み合うことで、単純なときめきだけでない独特のテンポ感が生まれそうだ。

水泳部という舞台も巧みで、必然的に鍛え上げられた体が露わになる環境に筋肉フェチのヒロインを放り込むのは、ある種の「最高の地獄」であり「最高の天国」でもある。その葛藤がラブコメとしての笑いと甘さを両立させるかどうかが、本作の読みどころになるだろう。

戸沢まりかは繊細なキャラクター描写と読み心地のよいテンポに定評のある作家で、この少々ニッチな設定をどこまで丁寧に、そして愛らしく描ききるかに注目したい。第1巻の反響次第では、続巻の展開もおおいに期待できる一作だ。