読者に選ばれた作品が、いよいよ本格始動
「どろん」の主人公は、妖怪・覚(サトリ)と人間の血を引く半妖の少年・白日杢(はくじつもく)。覚は本来、人の心を読む力を持つ妖怪だが、杢はその能力を人間に対しては発揮できない。その代わりに彼が持つのは、"人ならざる者"の心を読む力だ。
物語が動き出すきっかけは、安倍晴明の血統を引く少女・倉橋明の登場。陰陽師の名門にして歴史的な呪術師の末裔である彼女と、妖怪と人間の狭間に生きる杢がどのように交わっていくのか――第1話からすでに、その関係性の行方が気になる引きを持っている。
ジャンプルーキー!から這い上がった、実力派インディーズ作品
注目したいのは、この作品の成り立ちだ。「どろん」はもともとジャンプルーキー!の連載争奪ランキングで読者の支持を集め、連載化を勝ち取ったインディーズ発の作品。編集部が選ぶのではなく、読者が「続きを読みたい」と票を投じた結果として少年ジャンプ+への掲載が決まった経緯がある。
この仕組みで生まれた作品は、すでに読者層に一定の熱量を持つファンが存在している点が強みだ。連載開始前から「知っている人には待望の正式連載」という状況が生まれており、口コミによる広がりにも期待できる。
和風ダークファンタジーとして見た、作品の可能性
設定の骨格を整理すると、妖怪・陰陽師・半妖という要素が絡み合う、王道でありながら独自の解釈が光る和風ファンタジーの構造を持っている。「人の心が読めない」という主人公の欠落と、「人ならざる者の心を読める」という特異な能力の組み合わせは、物語に複雑な人間関係と孤独感をもたらす装置として機能しそうだ。
安倍晴明という実在の歴史的人物の血統を持つヒロインを絡めることで、世界観に深みと説得力を持たせようとする意図も感じられる。ダークファンタジーとして陰鬱な雰囲気を持ちながらも、少年誌らしいエネルギーをどう両立させるかが、今後の展開における見どころのひとつになるだろう。
東屋耕佑がこの設定をどこまで掘り下げていくのか、毎週金曜の更新が楽しみな一作だ。