秋田の醸造所を舞台に、引きこもり女子がビール造りへ
本作の主人公は、両親の離婚を機に東京から母の故郷・秋田へ引っ越してきた21歳の羽立姫子(はだちひめこ)。引きこもり気味でゲームに没頭する日々を送っていた彼女が、ふとした散策の中で古い蔵を改装したクラフトビール醸造所「オーガクラフト」に迷い込む。そこで出会ったのが、若く長身のブルワー・二田(ふただ)のどか。彼女に勧められるがまま一口飲んだクラフトビールの芳醇な味わいに心を奪われた姫子は、ビール造りの世界へと足を踏み入れていく。
パッと見は日常系の流れを汲むお仕事マンガだが、本作の魅力はそれだけにとどまらない。高身長でボリューミーなキャラクターや褐色ギャルなど個性豊かな面々が揃い、スローライフ的な空気感の中でにぎやかなやりとりが展開される。ゆるやかな雰囲気の中にも、クラフトビール醸造の工程がしっかりと描かれている点が、この作品を単なる"かわいい女の子マンガ"に終わらせない理由だ。
フィクションだけど絵空事じゃない、クラフトビールカルチャーへの誠実さ
本作を読んで印象に残るのは、クラフトビールという文化への真摯な向き合い方だ。醸造の手順や素材の扱い、ブルワーとしての仕事の大変さと楽しさが、キャラクターたちの会話や行動を通じて自然に伝わってくる。作り手側の視点でビールを描くマンガは決して多くなく、その意味でも「オーガクラフト」は独自のポジションを確立している。
秋田という地方都市を舞台にしている点も見逃せない。地域の風土や文化がクラフトビールと結びつく様子は、地方移住やローカルカルチャーへの関心が高まる昨今の空気感ともうまく共鳴している。引きこもりだった主人公が土地の人々や仕事と出会い、少しずつ変わっていく姿は、等身大の成長譚としても読める。
欲望ダダ漏れで不器用な姫子がどこまで成長し、どんなビールを造るようになるのか——今後の展開が楽しみな一作だ。現在1巻が発売中で、第1話は試し読みも可能。クラフトビールに興味がある人も、お仕事マンガが好きな人も、まずは一話だけでも読んでみてほしい。続巻の情報も引き続き追っていきたい。